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こどもが大人と一緒に理解する 里親制度のカードキット

取組事例の主な分野:こどもが大人と一緒に理解する 里親制度のカードキット

支援団体トピックス

こどもが大人と一緒に理解する 里親制度のカードキット

一般社団法人 福祉とデザイン(福岡県)

2026年8月5日 掲載

様々な事情で家族と離れて暮らすこどもを迎え入れる里親制度は、委託率が増加傾向にあるものの、里親と里子の関係が悪化するケースもあります。「福祉とデザイン」(本社:福岡県福岡市)は、良好な関係作りに役立てばと、会話を通じて里親制度やこどもの権利などを学ぶフォスタリング(里親養育包括支援)カードキット「TOKETA(とけた)」を開発しました。令和6年(2024年)度には、カードを利用する里親や支援者らへの調査結果を反映した「改良版」を発表。全国の活用事例をオウンドメディアで発信する取り組みも進めています。


こどもが大人に聞きたいことを書いたしつもんカード(福祉とデザイン提供)

信頼関係を築き 疑問も解消

TOKETA開発のきっかけは、「福祉とデザイン」の田北雅裕理事(九州大学准教授)が、公益財団法人日本財団から「里親制度について、こどもにもわかりやすく説明できる冊子をデザインしてほしい」と依頼されたことでした。平成28年(2016年)の児童福祉法改正では、虐待などで保護されたこどもは「里親委託」が優先されると明記されました。制度の普及や理解を促す大人向けの冊子は数多く発行されたものの、こども向けはほとんどありませんでした。このため、こどもが制度を十分に理解できないまま、里親家庭に託されるケースが少なくなかったといいます。何とか解決したいとの思いから、田北さんは、大阪のデザイン事務所・UMA/design farmと協働して、こどもと大人が一緒に楽しみながら制度を理解するカードキットを提案しました。


3種類のカードが1セットになったTOKETA

TOKETAは、「こんにちはカード」「しつもんカード」「おうえんカード」の3種類で構成。「こんにちはカード」は、例えば「好きな」「時間」というように、カードを組み合わせたお題に沿って対話を進め、こどもと支援者を打ち解けた関係にする役割を持ちます。「しつもんカード」は、「なぜ里親家庭で生活するの?」などの普段は聞きづらい質問を伝え、話し合うことを促します。そして、「おうえんカード」は、「わたし」を中心に「里親」「ケースワーカー」らのカードをマップに貼り付けることで、周囲にいる応援者の存在に気付く仕組みとなっています。

カードキットの名称は、「関係が打ち解けた」「疑問や不安がとけた」との思いを込めました。里親家庭内や、一時保護所の入退所時の面談といった場面で、こどもが安心して声を発せられるようにする効果が期待されます。


里親や支援者ら向けにTOKETAの使い方について解説する田北さん(奥、福祉とデザイン提供)

利用者の声聞き 改良につなげる

全国の児童相談所やフォスタリング(里親養育包括支援)機関、里親向けに、令和4年から提供を開始し、全国各地の研修会、ワークショップでカードの活用方法を紹介しました。さらなる改良を図るために「こどもの未来応援基金」を活用し、令和6年9月から令和7年1月にかけて、TOKETAを活用している人を対象にしたインタビュー、アンケートを実施。こどもの声を聞く際の課題点などを洗い出しました。調査結果を基に、しつもんカードの表現を改めたバージョンを令和7年3月に提供を開始し、「分かりやすく、使いやすくなった」との好評を得ているそうです。

調査と改良に携わった福祉とデザインの新開咲紀さんは、「大人の目線では、こどもが違和感を抱く表現は気づきにくい部分がありました。調査によって、利用者の意見を反映した、より良いものにできたと思っています」と手応えを話します。


TOKETAを活用しているアドボケイトの方々に使い方について聞き取りを行う様子(福祉とデザイン提供)

社会的養育の考え 社会へ伝える

また、調査を通じて、「TOKETAの活用ノウハウを発信してほしい」という声が寄せられたことを受け、インターネット上の投稿サイト「note」で活用事例を公開。一連の取り組みが評価され、改良版のTOKETAは令和7年度のグッドデザイン賞を受賞しました。

現在は子を里親に委託する実親向けに制度の理解を促したり、ショートステイというかたちで頻繁に里親家庭に預けられるこどもの精神的なケアに役立てたりするツールの開発も進めています。田北さんは「これからは、社会的養護のこどもはもちろんですが、全てのこどもを支えていく『社会的養育』の考え方が重要になってきます。こうしたコンセプトを世の中に伝え、困る人がいない社会の実現に向けて、取り組んでいきたいですね」と語りました。


一般社団法人福祉とデザインの(右から)田北雅裕さん、新開咲紀さん、代表理事の酒井咲帆さん(同法人提供)

(令和8年1月26日取材)