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不登校・困窮家庭の中高生に届けた「働く体験」の3年間

取組事例の主な分野:不登校・困窮家庭の中高生に届けた「働く体験」の3年間

支援団体トピックス

不登校・困窮家庭の中高生に届けた「働く体験」の3年間

一般社団法人こもれび(大阪府)

2026年8月3日 掲載

ビルやマンションが立ち並ぶ大阪市西区。その一角に拠点を構える一般社団法人「こもれび」の活動の礎となったのは、平成22年(2010年)に区内で起きた幼いきょうだいの児童虐待餓死事件でした。「こんな悲劇を二度と繰り返してはならない」。その強い思いから、子育ての孤立を防ぐ取り組みが始まりました。


「お仕事体験」の一貫として、自動車ディーラーで作業をする様子(こもれび提供)

中高生に社会との接点を 「お仕事体験」事業

法人化したのは平成25年です。相談支援やフリースクール、放課後等デイサービス、こども食堂など、地域の声に耳を傾けながら事業を拡大していきました。活動を重ねる中で見えてきたのが、中高生世代に広がる社会との接点の薄さ、体験の格差だといいます。
都会にはさまざまな仕事があります。しかし、高いビルの中で大人たちがどんな仕事をしているのか、こどもたちにはなかなか見えません。経済的な理由で習い事や体験活動に参加できないこども、不登校のために家族以外の大人と話す機会がほとんどないこどももいます。それでも、学校を卒業すれば、否応なく「社会」に出なければなりません。「その前に、働くとはどういうことかを少しでも知る機会をつくれないか」という思いから始まったのが「お仕事体験」事業でした。

専門職が伴走する「はじめの一歩」

主な対象は、不登校や生活困窮といった事情から身近にロールモデルとなる大人がいない中高生です。まずは、キャリア支援の専門家による講座からスタート。世の中の職業を知り、自分の興味、強みを探ります。そして、働く上でのマナーやコミュニケーションから、実習後のお礼状の書き方、お金の管理まで段階的に身に付けていきます。
令和4年(2022年)度から3年間にわたり「こどもの未来応援基金」に採択され、キャリアコンサルタントや社会福祉士、スクールソーシャルワーカーにそれぞれかかる人件費、講座運営費、実習受け入れ先への謝金を中心に基金を活用しました。専門職の伴走体制を整えたことが、こどもたちの挑戦を支える大きな土台となってきました。
「お仕事体験」の実習先は、営業事務、カフェ、保育園、レストラン、自動車ディーラーをはじめ多岐にわたります。社会福祉士の佐藤あおいさんが、こどもの希望に応じて新たな受け入れ先を開拓してきました。


こどもたちの体験機会の重要性を語る佐藤さん

自動車ディーラーでは、機械好きの生徒たちが整備士の仕事を体験しました。つなぎのユニフォームに袖を通し、ボンネットを開けた瞬間、目が輝いたといいます。洗車や点検作業、見積書の作成を経験し、「働く姿」が具体的な将来像へと変わっていきました。インターネットセキュリティー会社での封入作業も印象的だったそうです。「企業に届く大切な書類である」との説明を受けると、こどもたちのまなざしと手つきは一変して真剣に。日常の作業が「社会を支える仕事」という意味を帯びた瞬間でした。


体験先での封入業務(こもれび提供)

受け入れ企業からは、「教えることで自分のやりがいを再確認できた」「こどもたちのリアルな実情を知ることができた」との声が届いています。こどもと地域の大人が出会うことで、双方に変化が生まれました。

身近な成功体験が未来を動かす

令和5年度から2年間は、こどもたちが主体となる「こもれびカフェ」も実施し、メニュー考案から装飾、接客までを担いました。オープン当日は想定を超える来場者で、こどもたちは即席で番号札を作り、役割分担を見直し、声を掛け合って乗り切ったとのことです。2年目は、かつて参加した生徒がリーダーとして後輩を支える姿も見られました。
参加者のアンケートからは、「自分たちでやり遂げた」という実感が大きな自信へとつながっている様子がうかがえます。プログラム修了後に、アルバイトや就職につながったこどもがいたほか、学校に再び通い始めた例もありました。


こもれびカフェでドリンクをつくる参加者(こもれび提供)

講座や実習のたびに、スタッフはこどもの「良いところ」を見つけ、手書きのカードにして渡してきました。積み重なる言葉は、自分を肯定する材料となります。「今は外に出られなくても、いつか『やってみよう』と思える日が来る。その時に地域で支えられる仕組みをつくりたいですね」と、佐藤さんは語ります。
働く体験とは、単なる職業学習ではありません。「自分にもできる」という感覚を取り戻す時間であり、こうした成功体験の積み重ねが、こどもたちの未来を確実に動かしています。「こもれび」の挑戦は、地域全体でこどもを見守る社会へとつながっているのです。

(令和8年2月6日取材)