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教育で恩返し 元校長がつくった放課後の学びの場

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教育で恩返し 元校長がつくった放課後の学びの場

NPO法人学び場子ども食堂(三重県)

2026年7月31日 掲載

紀伊半島の東部に位置する三重県南伊勢町は、漁業と温州みかんをはじめとする柑橘類の栽培が盛んな「伊勢の南玄関」として知られています。そんな自然豊かな地域で、NPO法人「学び場子ども食堂」は、支援が必要なこどもたちに向けた放課後の無料学習サポートを実施しています。


NPO法人学び場子ども食堂の活動拠点、南伊勢町は熊野灘に面し、漁業と農業がさかんな地域(写真は南伊勢町提供)

出席率9割近く 遊びも学びのモチベーションに

「先生、今日、学校で発表できたよ」。学習サポートの会場から、こどもたちの明るい声が聞こえます。
学習サポートは毎週金曜日の夕方5時から2時間に実施。利用登録しているこどもたちの出席率は、毎回9割近くに上ります。体調を崩した場合を除いて、ほぼ出席している計算です。学校の宿題などその日の課題が終わると、こどもたちは人気のボードゲームで一緒に遊びます。

「早く遊びたくて、集中して課題に取り組むこどももいる」と話すのは、NPO法人「学び場子ども食堂」理事長の大下武彦さん。同じゲームをみんなで楽しむ時間は、「学ぶ仲間と一緒にいられる」という環境づくりでもあり、こどもたちの勉強のモチベーションを高めているようです。


学習サポートに参加したこどもたちは、その日の課題を終えると一緒にゲームで遊ぶ(写真はNPO法人学び場子ども食堂提供)

学習サポートのスタッフ 全員が元校長

学習サポートは、大下さんの「教員経験を生かして、こどもたちの役に立ちたい」との思いから始まりました。南伊勢町の小学校の校長を最後に令和3年(2021年)3月に教員を定年退職。同年11月にNPO法人学び場子ども食堂を設立し、翌月から放課後の学習サポートを始めました。学習サポートを担当するスタッフは4人(令和8年2月現在)で、全員が教員OBで校長経験者であることが特徴です。町内の小中学生10人(令和8年2月現在)が利用しており、スタッフがほぼマンツーマンで寄り添って、学校の授業でわからなかった箇所や宿題をフォローしています。長年教壇に立ち、三重県教育委員会への出向経験を持つ大下さんは、家庭の事情などで学習環境が十分に整っていないこどもたちを放課後に支援する必要性を感じていました。このため、学習サポートは、南伊勢町のひとり親家庭、就学援助・生活保護を受けている家庭の小中学生に限定しています。町の子育て・福祉課と町内の小中学校と連携し、対象家庭にチラシを配布するなどして参加者を募っているそうです。


NPO法人「学び場子ども食堂」の学習サポートは、ひとり一人の学習ニーズに合わせた授業を実施している(写真はNPO法人学び場子ども食堂提供)

学習サポートの開始から5年目を迎え、大下さんは「学習習慣が少しずつ身についてきている」と活動の手ごたえを実感しています。こどもたちからの「友達と一緒に勉強できるので楽しい」「学校の授業がわかるようになった」といった声が原動力です。「こどもが自宅で勉強するようになった」など保護者から感謝のメッセージも届いています。また、保護者からの教育相談にも応じています。小学校低学年から利用し、希望する高校に合格したケースもあるとのことです。
大下さんは「ここに来れば学校に行く時、宿題をしていないという状況が、週1回はクリアできる。学校の宿題もきちっと出せるし、勉強について自信もつく」と意義を語ります。

こども食堂とフードパントリーで食事も支える

NPO法人学び場子ども食堂は、学習サポートの開催日に合わせて、学習サポートの利用家庭を対象に、無料のこども食堂とフードパントリーを実施しています。こども食堂では、学習サポートの授業後に各家庭の人数分のお弁当を持ち帰ってもらっています。保護者に食事の準備などの家事を気にせず、こどもと一緒に食事の時間を楽しんでほしいとの考えからです。調理は地域の業者に委託しています。
フードパントリーでは、お米や野菜、果物、レトルト食品や飲料などを配布しています。漁業と農業が盛んな南伊勢町では、地元の農家から白菜や柑橘類の「せとか」といった地元産の旬の作物が届くことも多いです。地域の事業者からは文房具をはじめ、こどもたちが使用する物品の提供を受けるなど、地域全体で活動を応援する動きが広がっています。


フードパントリーで配布している食品の中には地元ならではの産品も(写真は学び場子ども食堂提供)

NPO法人学び場子ども食堂は、令和5年度と令和6年度に「こどもの未来応援基金」を活用し、学習教材や弁当の購入費用などに充てています。活動の領域も拡大しており、令和7年度からは学習サポートのスタッフが南伊勢町内の学童クラブで出前授業を始めました。大下さんは「こどもたちが目標や夢に向かって進みたいと思えることが大事。一定の学力を保障することで、自立を助ける。自分も教育によって人生を切り開くことができた」と活動への思いを語ったうえで、「地域と連携を強め、これまでに培った学習サポートのノウハウを三重県内の他地域へも広げたい」と今後の展望をお話しいただきました。

(令和8年1月14日取材)