募金や寄付で支援する
こどものみらい古本募金
古本流通を活用し寄付事業を展開 本に親しむ機会を次世代に
株式会社バリューブックス(長野県)
2026年4月28日 掲載
株式会社バリューブックス(本社:長野県上田市)は、2007年の創業以来、インターネットを活用した本の買い取りと販売で業績を広げ、独自のビジネスモデルで出版流通の新たな担い手として存在感を高めている。創業者らの出身地、長野県上田市に本社を構え、ビジネスだけでなく買取額をユーザーの希望する寄付先に寄付する「チャリボン」事業を展開し、本のリユースと社会貢献の両立を進めてきた。2024年10月には、社会・環境・ガバナンスへの取り組みを包括的に審査する国際認証「B Corp(ビーコープ)」を取得した。

志を共にするバリューブックスの社員たち(バリューブックス提供)
本の買い取り代金を寄付に 「チャリボン」事業
「本を取り巻く社会の循環をもっと自然に、無駄の少ないものにしたいと思っている」。バリューブックスで寄付事業を担う廣瀬聡さんはこう話す。会社が掲げるミッションは「日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える」だ。
同社は、本や音楽CDなどの中古品を買い取り、検品、クリーニング等をして販売するリユースビジネスを基本としている。そうした本の流通はインターネットが中心だが、実店舗や移動式の書店の運営、卸サービスも手がけている。地元の若者を中心に事業を興し、インターネットを活用することで市場を全国規模に拡大。2025年6月末時点の売上高は39億1,700万円、年間の本の販売点数は540万点、在庫点数は187万点となった。現在、上田市にある大型の倉庫に加え、埼玉県内に倉庫の新設も予定している。
もっとも、本を巡る環境は年々厳しくなっている。出版科学研究所によると、2025年の紙の書籍・雑誌の推定販売金額は前年比4.1%減の9647億円となり、1975年以来50年ぶりに1兆円を割った。売り上げがピークだった1996年の2兆6564億円と比べ、4割以下の水準。そうした中、買い取った際に値段がつかず、そのままでは古紙回収に回ってしまう本を読み手に届ける「捨てたくないプロジェクト」に取り組んだり、古紙になるはずだった本を活かして製作した「本だったノート」を販売したりしている。「いずれもミッションに則って本の循環を促す取り組み」と廣瀬さんは話す。

こどもの未来応援国民運動と連携しながら、チャリボンの仕組みを活用して2017年から行っているこどものみらい古本募金
そうした取り組みの一環として、社会貢献プログラムにも力を入れている。2008年からは手持ちの本やDVDなどの買い取り代金を様々な社会貢献団体に寄付する「チャリボン」という事業を実施してきた。被災地支援から健康・福祉の増進、人権保護、そして平和維持活動といった幅広い団体の中から選んで寄付することができ、2025年10月末時点で、利用者は累計30万2,141人、寄付した本は2,821万8,183冊、寄付金額は8億1,273万円に上る。
「読み終わった本」の寄付 贈りやすく、受けやすく
この仕組みを応用して、東日本大震災の際には、岩手県陸前高田市に贈られたまま手つかずになっていた本などを、バリューブックスが買い取る形で現金を寄付し、被災した市図書館の復興に役立てたケースもある。「こどものみらい古本募金」もそうした取り組みの一つ。チャリボンの仕組みを使って、「こどもの未来応援国民運動」の一環として設けられた「こどもの未来応援基金」に2017年から寄付を続けている。基金はこどもたちの食や学び、そして居場所づくりなどに役立てられている。

こどものみらい古本募金を通じたこども支援の仕組み
寄付を受ける側からも、「寄付をください」とはストレートに伝えづらくても、「読み終わった本があったら贈ってください」とはお願いしやすいという。寄付する側にとっても、読み終わった本を段ボールに詰めて送料はバリューブックス負担で送るだけなので、行動のハードルが低くなる。幅広く利用できる仕組みのため、企業が社会貢献の一環として社内で本を集めて送ってくれるケースもあるという。

あらゆる場所に本を届ける移動型書店「ブックバス」も運営している(バリューブックス提供)
本に出会う機会の格差を少しでも減らしたい
「単なる利益追求ではなく、社会的な価値を創出することに重点を置いています。とりわけ未来を担うこどもたちに本を通じた教育や文化的な豊かさを提供することを目指しています」と廣瀬さん。こどもの読書機会を広げようと、2009年から「ブックギフト」という取り組みも行っている。保育施設や学校、ひとり親家庭など、本を必要としているこどもたちに本を贈る。寄贈冊数を数え始めた2017年以降、累計7万冊超を450超の場所に届けている。廣瀬さんによると、書店の少ない地域や経済的な事情から本を手にしづらい家庭において、読書に親しむ機会を創り出すきっかけとなっている。

「本を通じてこどもたちを支援することで、私たちも力をもらっている」と話す廣瀬さん
社員の間でも、こうした事業を通じて社会貢献の意識が高まっている。こどもたちを支援する取り組みが、自分たちの仕事に対する誇りにつながっているという。廣瀬さんは「本を手にして喜んでいるこどもたちを見ていて、こちらが力を与えてもらうことも多い。本を扱う企業として、本と出会う機会の格差を少しでも減らし、これからもこどもたちが安心して読書体験を育める環境を作り続けたいと思っています」と語った。
(2026年2月2日取材)